ボルヘス的魔術に挑む「Path of the Abyss」は間違いなく世界に通用するタイトルだ | ゲヲログ2.0

ボルヘス的魔術に挑む「Path of the Abyss」は間違いなく世界に通用するタイトルだ

目新しいところはないかもしれない。

見た感じ、『ダンジョンクロウル』というジャンルに忠実なタイトルなんだろう。本作は、Wizやダンマスに強い影響を受けた、基本を抑えたうえで独自の世界観を作りこんでいる作風のゲームのように見える。例えば、その典型的であり伝統的なRPGの主要素は次のように箇条書きで表すことができる。

伝統的な部分

・グリッドベースの移動

グリッドベースで移動でき戦闘を行う。視点移動もWiz方式を実現している。

・キャラクタークリエイションの自由さ

様々な戦闘パターンをこなせるキャラクタークリエイション要素のこと。

・遺跡に秘められた謎の解明とアイテムの収集

謎深き闇を抱えるダンジョンには様々な謎やアイテムが存在する。

これだけみると確かにこのゲームは伝統に凝っているJRPGなのかもしれないが、工夫が随所に凝らされているのもまたリリース前から読み取れることだ。そういった革新的な部分は次のように箇条書きで表すことができる。

革新的な部分

・リアルタイム戦闘

Wiz系のRPGに特殊ともいえるリアルタイム戦闘を実装した点。

・隊列パネルに装備するスキル枠の設定

隊列パネルという整列部位それぞれにスキルをあてがう新鮮なRPGプレイをもたらした点。

・簡素で彩りのない独特なゲームデザイン

簡素な『モノクロペン画』をゲームデザインの基調としている点。

たしかに様々な意見があるだろう。まず、Wiz恒例のコッテコテターンベース戦闘を排除した点にはじまり、パネル整列式のスキル装備もシステムが最適化されすぎているという批判がこれからのレビューでありそうだ。彩りのないモノクロペン画で表現されたゲーム全体の描画も含め、これらどの点も批判される余地はあるが、一方で、そのどの点においても工夫が凝らされている証が現時点からでも十分垣間見えるとあたしは思う。

かつてボルヘスは『物語は壮大に、あたかもそこに存在するかのように、描いてしまう』ことが重要だと述べた。つまり、物語はあくまで簡素に表すことに徹して、そこに存在感が(既成事実のように)あるよう・見えるように描いてしまうことが重要なことだ、というのである。これは言い得て妙に最近の最適化された傑作ゲーム群の制作哲学に共通している。もちろん「ダークソウル」シリーズはそれをシステム面でもストーリー面でも徹頭徹尾追求することで傑作となった。同様に「Path of the Abyss」がそういった傑作になるポテンシャルがないようには到底思えない。

Steamストアページに見られるように、本作はストーリーらしきストーリーはないタイトルだ。はっきり言えば特段、骨太なストーリーは皆無だ。だが、そこにプレイヤーがネガティブになる必要はまったくない。ボルヘス的に基本プロットは抑えたうえで”遺跡探索”というプレイヤーに委ねられた想像力を掻き立てるデザインを実現しているからだ。しつこく繰り返すが、ボルヘスも言うように『物語の本質はそこにあたかもあるかのようにデザインすること』が重要なのだ。

本作が彩りのないペン画調のグラフィックデザインを採用しているのは、その演出の一因になっているように思う。

※アイキャッチ画像は すずきすずぞう|pixivFANBOX より引用させていただきました。