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レバノンの栄光と影

レバノンの栄光と影

レバノンで例の爆発事故が起きてから一か月が過ぎた。経済的苦境に陥り、国民生活もままならず、度重なる内戦に苦しめられている国家だ。だが、もともとこの国はこのように極度に衰退していたわけではない。首都ベイルートは「中東随一の港湾都市」と呼ばれ、「世界で一二を争うリゾート地」とも呼ばれた時代があったことを知っている方はあまりいないだろう。これが”レバノンの栄光”の時代である。これには理由がある。

その最大の理由は、地政学的なメリットがあったということだ。レバノンは首都ベイルートを軸に、欧州と中東との懸け橋となれる場所にちょうど位置していた。ゆえに中東一の経済圏を構成するに至り、また金融街なども発展、その後前述したようにリゾート業も盛んになった。これが”ベイルートの繁栄”を中軸にした、”レバノンの繁栄”の一番の理由である。このようにレバノンは、海外からの投資や優秀な人員投下までもが豊富だった経緯がある。当時は中東といえどもレバノンは経済圏としては例外だったのだ。

転機となったのは実は本来メリットだったはずの地政学的な問題を背景にした宗教対立である。難民やイスラム系組織がレバノンに流入することで、中東一の港湾都市としての支配図は一変する。宗教的バランスは大きく失われ、イスラムの力が強まってきたのだ。もともといたキリスト・マロン系と、宗教的な価値観を相対するイスラム系の組織・団体が影響力を次第に強めていく過程において、政治的なバランスは脆く崩れ去った。イスラム系の組織が影響力を強め、結果、多数の宗教・宗派が乱立するようになり、その対立から内戦が始まる。一般市民を巻き込み、かつて「リゾート」と言われた舞台であるビルを相対しながら、敵に自動小銃や火器を掃射するという異常事態になった。これが「ビル戦争」だとか「ホテルの戦争」と言われた最もレバノン内戦の苦難を象徴する戦争である。なんとも皮肉で残虐凄惨極まる内戦の始まりだった。

海外投資は冷え込み、治安は極度に悪化の一途をたどり、その危機感から優秀な人材はみなレバノンから去っていった。経済は衰え、リゾート地は破壊され、弾痕がいく場所にも残った。”レバノンの栄光”はここでもってして、崩壊に至る。第五次中東戦争とも呼ばれた、残虐熾烈な戦争につながり、その栄光は”レバノンの苦難”に変わったのだ。

こうしてみると、レバノンの味わった苦痛は皮肉にもその裏合わせであることがわかる。地政学的に優れていることは、かつてのレバノンの安定の理由だった。だが、難民や過激派が押し寄せやすい地域でもあったこと、および、それに基づく宗教的なバランスの崩壊が、結果的に内戦につながったとも考えられる。”レバノンの栄光”は実はその陰の部分では表裏一体であった。今回の爆発事故ももともと汚職まみれだった政治的な混迷がさらに進展することにつながり、長く荒廃した時代は、まだ続くと見られている。

「中東のパリ」とも言われた繁栄は、此処に至り完全に失われた。

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