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書評「小説BLAME!大地の記憶」

書評「小説BLAME!大地の記憶」

「BLAME!」の世界観は面白い。ハードSFの概念もあるが、ソフトSFの概念も同時にある。サイバーパンクの独自解釈・独自アレンジが効いているのだ。つまり、サイバーパンクというソフトウェア的な世界概念の中に、ハードアクションが入り交じり、それらが目まぐるしく交錯する。正当なSFでありながら、適度に難解で理解力を要する漫画だ。

その象徴として物語が描かれるのはやはり建造物のありかた。建造物は「建設者」と呼ばれるロボットが永久に増築を繰り返すものとして描かれており、あえてセリフ言葉を書かずに、それでいて世界観だけのスケイルで圧倒される。弐瓶が建築士の資格をもっているからこそできた芸当だ。つまるところ、本来元来「BLAME!」における構造体は何も”書かずして”絵だけで圧倒する、ということに尽きる。

ただ、それだけでは編集サイドとしてはダメということで、ストーリの本軸部分が描かれるようになったらしいとも聞く。ここに至ってこの漫画は最高傑作になる。あたかも小説がそこにあるかのようにボルヘス的に漫画で描くわけ。なにもない、という存在こそに、なにかある、ということになっている。「ドーナッツの穴を残してドーナッツを食べられる」実存と象徴の漫画だ。世界があるかのように書くのがボルヘスの小説だった。弐瓶はそれを意識してないだろうけど、ごく自然にボルヘス的、そうなっちゃってる。だからこの漫画はあたしの呼んできたSFの中でも特記に値する傑作なんや。

ストーリ部位を描き出してからはスチフ・イコ・ドモチェフスキー・プセル・ダフィネルリンベガなど素晴らしいキャラクターばかりが登場。設定画のような表現にて、同時に動き出しそうな表現にて、漫画を描くわけ。例えば、エレベーターや武器防具の特徴的な描き方には感心させられるもんがある。個性的なキャラクターはどれも現実味を帯びながら、躍動感あり、言葉数少なく何も語らずとも存在自体が生き生きとしている。キリイ側もケイ素生物側も同じだ。悪役も敵役もここにはなく、究極時における「生存権」をめぐって互いに殺し合い争うわけだ。

そしてこの小説版では漫画第二巻まで、小説にできそうな部分だけしっかりと書ききってくれたこと、これ本当にありがたいことだ。沖方による小説化なんだが、これが素晴らしいこと。というのも漫画原作でははじめのほうってやっぱ絵が荒いんだよね…それを小説版でしっかり補完してくれているってのがすごい。また、この文字表現難解な原作漫画を、特徴的な建造物のありかた含め、実直に小説化できている。例えば、シボが生電社の頭取にあらがうシーンなんかすごく原作だとまだまだ荒い絵画で描かれているんだけど(このあたりでシボが涙を流したりするシーンはちょっと違和感があるとあたしは思ってる…)小説だと絵画じゃなく文字で表現するんで、リメイドが可能なんだな。つまり原作でできなかった部分、表現しきれなかった部分、また、違和感のあった部分が、この小説版で沖方がしっかり書いてくれてるのよ。だからこの小説はすごい。SFのいいところどりばっかなわけよ。

たしかに続編も小説化させてみたいけど、それって成功するかなぁ…序盤部分の簡潔でかつ、漫画が荒かった部分だけ抽出してしっかりと一作にはなってるんで、まあ沖方としてもこれで「BLAME!」がらみの小説の仕事はやり終えたのでは?そうあたしは思ってるよ…「BLAME!」とは違く、総じてセリフ部分をしっかり描いた方面、そういう意味では「シドニアの騎士」は弐瓶の正当な後継となりうる漫画なんだろうな~…

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