今回は「品質工学」の中でも、パラメータ設計の初歩の解説をする。適切な直交表を選択、このとき外側に配置する誤差因子の意味合いが、本来の目的ごとに変わってくる。PC演算だけだと、実際に運用するにあたり、どこにどの因子が、どうやって配置されるかかなりわかりにくく、混乱をきたす。また参考書ごとに①静特性と②動特性からの解説が入っていないものもあり、より複雑になっている解説が多い。
品質工学の静特性と動特性の本質的な違いは、時間軸の考慮の違いではなく、2次元的にデータを見るかどうかの違いです。この点は、誤解なく理解する必要があります。動特性の「動」は、信号因子(X)に合わせて、Y が「動く」ところから来ています。ただし、2次元の片方の次元を時間軸にすれば、時間軸の変化を調べることもできます。( 動特性の実験の応用を参照)尚、品質工学全般に言えることですが、品質工学は基本的に「静」の学問です。
※引用元:静特性と動特性の使い分けより
ここでは、静特性と動特性の違いを簡単に見てから、静特性における直交表と配置から整理して考える。
①静特性—入力の変化なしに出力目的を探る。
より具体的に言うと、静特性のパラメータ設計の種別には以下のようなものがあるが、モデルを簡単に示すために、外側に張付ける誤差因子条件らを、
①-A:「直積配置」するか
①-B:そのままそれら誤差因子とその実験データを外縁に配置するか?
だが、この場合簡潔さを優先させ後者を選ぶ(ここで直交表の外側に配置したのは下図表の青い部分である)。
また、静特性は…
①-α「望小特性」目的が小さければ小さいほど良い(ただし非負の値)。
①-β「望目特性」目的が一定の水準に近ければ近いほど良い。
①-Θ「望大特性」目的が大きければ大きいほど良い。
の三つに分けられる。ここでは①-αを取る(例えば、摩耗量とか摩擦係数)。
ただし、品質工学では①-β「望目特性」の事例が圧倒的に多い(一定の水準に収めたい目的の特性があるため)。
②動特性—静特性と違い、入力を変化させて出力目的を探る。静特性でかなわないケースのため設けられた。よく言われるのが、自動車のペダル踏み込みとブレーキの利き具合の関係性。入力と出力が関係性あり、自分で入力を変化させることができる。
直交表にL18を設定。ここでA~Hは制御因子のことを示し、その下の各行にはそのパラメータ水準が入る。例えば、A行は二水準である。その他は三水準である。N1およびN2となる誤差因子を指定して、外乱(ノイズ)を示す。その誤差因子=外乱にあたる各行には、そのA~Hまでのパラメータ水準の条件時の目的たる数値の実験結果を入れる。これで因子の割り付けと実験結果のプロットが終わり、パラメータ設計が中盤まで来たことになる。
L18 | A | B | C | D | E | F | G | H | N1 | N2 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | ||
2 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | ||
3 | 1 | 1 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | ||
4 | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 | 2 | 3 | 3 | ||
5 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 1 | 1 | ||
6 | 1 | 2 | 3 | 3 | 1 | 1 | 2 | 2 | ||
7 | 1 | 3 | 1 | 2 | 1 | 3 | 2 | 3 | ||
8 | 1 | 3 | 2 | 3 | 2 | 1 | 3 | 1 | ||
9 | 1 | 3 | 3 | 1 | 3 | 2 | 1 | 2 | ||
10 | 2 | 1 | 1 | 3 | 3 | 2 | 2 | 1 | ||
11 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 3 | 3 | 2 | ||
12 | 2 | 1 | 3 | 2 | 2 | 1 | 1 | 3 | ||
13 | 2 | 2 | 1 | 2 | 3 | 1 | 3 | 2 | ||
14 | 2 | 2 | 2 | 3 | 1 | 2 | 1 | 3 | ||
15 | 2 | 2 | 3 | 1 | 2 | 3 | 2 | 1 | ||
16 | 2 | 3 | 1 | 3 | 2 | 3 | 1 | 2 | ||
17 | 2 | 3 | 2 | 1 | 3 | 1 | 2 | 3 | ||
18 | 2 | 3 | 3 | 2 | 1 | 2 | 3 | 1 |
↓ここまでくればあとは次の記事のようにRでできるが、望小/望大特性に限らず、SN値の大きい水準をとる。これが適切条件であり、現行条件よりも利益が最大化できる事例の条件となる。これが下記の記事に記したものであるが、コンピューターベースで計算を行うと、より理論の理解が深まらないことが多いということはここまででも既に実感できたとおりである。